書類では見えなかったもの
面接の現場において、身だしなみはそれまでの経歴以上に大きな意味を持つことは常識ですが、
中には社会人を経験したことのある中途採用の場面においても
「これはちょっと」と思ってしまういでたちで来てしまう人がいます。
私が今まで面接を経験してきた中でも、かなり強烈な困った体験をしたのが、
中途で営業としての採用を希望して訪れたある30歳を少し過ぎたくらいの女性でした。
その女性はそれまで保険会社で外交のお仕事をされてきた人ということでしたが、
安定的に働ける場所を希望して弊社の営業部に応募をしてきたのでした。
事前に送付してもらった書類は非常にきちんと作成されており、
履歴書の文字も丁寧で読みやすいものだったので、
私をはじめ上司も「この人は採用される可能性が高いな」と思っていた矢先でした。
その方は約束の時間通りにきちんと面接室に来られました。
当時の年齢は私よりも若干年上ということで、
写真の印象ではかなり美人でしたので、
私は自分などが面接に同席してもよいものかと上司に相談してしまったほどです。
上司の「女性目線からの意見も聞きたい」という言葉に促されて
一緒に面接のための応接室に入ったのですが、
しばらくした彼女が部屋に入ってきた瞬間、つい「うっ」と眉をしかめてしまいました。
というのは、その訪れた女性は非常に匂いのきつい香水をつけていらっしゃったからです。
その女性の印象は、送られてきた書類とあまりイメージがかけ離れたところはなく、
むしろ本人を前にするとハキハキとした物言いや堂々とした態度に、
面接をするこちらがわが押され気味になってしまうくらいのものです。
営業社員としては確かに期待出来る部分もあるのですが、
どうにもその香水の匂いがあまりにもきつすぎるせいか、
ご本人の人間的な魅力が半減をしてしまうように思えます。
本人が気づかない落とし穴
面接の終盤くらいになって、私の上司にあたる男性の部長が香水について少し
「香水はいつもおつけになっているのですか?」とやんわり尋ねたところ、
女性は突然いきいきと目を輝かせました。
「わかっていただけますか?これは海外でしか手に入らないブランドもので○○(香水の名前)と言うんです。
前職では、この香りを気に入ってくれる人もいて~」
とかなり自信たっぷりにお話をされたので、上司は苦笑いをしていました。
その件を含め私や他の面接官とも相談をして上司はしばらく悩んだ様子でしたが、
結局その方の採用は見送ることになりました。